バスク / ナバーラ / アラゴン 縦断旅行記

2004年6月11日(金)

● ビルバオ篇(その1)

 11時40分VLCバレンシア発のエアーエウロパUX9501便で、BIOビルバオへ空路で移動。早期割引を使って、片道46.56ユーロ。所要1時間15分。ビルバオ空港は、新しく快適な造りの空港でした。建物を出て右手にある乗り場からバスに乗り、中心部へ移動。1ユーロ。

 北部のビスケー湾沿いは雨が多いため、いわゆるスペインから連想される風景とは違っていると聞いていたのですが、緑が多くて別な国に見えます。なんか、バレンシア@28℃より、気温が10度ほど低いんですけれど…… 雨まで降っているし(^^;) 高温を想定して衣装を整えてきたので、肌寒く感じます。

 ビルバオ(Bilbao、現地語でBilbo:ビルボ)は、バスク自治州の中心都市。人口38万人。かつては鉄鉱石の産地として知られ、鉱工業を中心に発達を遂げました。そのため経済力が強く、スペイン最大手のBBVAビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行発祥の地でもあります。

 空港バスはフェデリコ・モユア広場(Plaza de Federico Moyua)の南側に到着。まずは荷物を預けに、レンフェ(RENFE : スペイン国鉄)のアバンド駅(Estacion de Abando)へ。大通りに沿って歩くと10分ほどの距離なのですが、沿道の建物がおしゃれ。家々に出窓が取り付けられているのです。通風を優先に考える他の地域では見かけないですね。おそらく冬の防寒ということで、窓を二重にしているのでしょう。どの建物も良く整備されていて、街作りにお金をかけているのだろうなぁと推測されます。

 アバンド駅の8番ホームにコインロッカーがあったので、専用メダルを購入して荷物をしまい(3ユーロ)、市内観光に出発――する前に昼食。駅構内の“Bocatta”で軽食をとる。ボカディージョ(スペイン風サンドウィッチ)にポテトと飲み物で、4.70ユーロ

 先ほど来た道を引き返し、14時30分ビルバオ美術館(Museo de Bellas Artes Bilbao)(3ユーロ)。旧館には中世の宗教画や近代絵画を展示しており、なかなか質の高いものがそろっていました。新館の方は理解不能(というか、私が嫌い)な現代美術。よって、こちらは数分で退出。

http://www.museobilbao.com/

 それから川を渡り、対岸にあるデウスト大学(Universidad de Deusto)の建物などを見て歩く。どうも『地球の歩き方』は、スペイン北東部の扱いが悪いですね〜 なんと、美術館を2つ載せているだけ。これは、あまりにひどい。交通機関の路線図も無いとは。現地で購入したガイドブックでは見どころとして紹介されているものが沢山あるのに。おかげで素晴らしい光景を見逃すところでした(この話は後ほど)

 さて、ビルバオ川の左岸を歩いていくと、グッゲンハイム美術館を突き抜けるようにして橋がかかっているのが見えてきます。近寄っていくと、橋脚を取り巻くように階段が見える。階段があるってことは、昇れるっていうことだよね? グッゲンハイム美術館は、フランク・ゲーリー(Frank Gehry)の設計による前衛的な建物が有名なので、これを橋の上から眺めると楽しそう。

 よし! と近づいてみると、なんとエレベーターがある。有料で、0.24ユーロ。なんか、料金収納のために配置している人の人件費を回収できない金額のような気がしますが、雇用の創出という点では見習うべきかも。2台あるうち、右側が美術館方面。ものの数秒ですが、やはり高いところから見ると綺麗。

 下り坂を降りていき、美術館前の観光案内所で情報入手。街の地図と、明日乗る予定のバスの時刻表を調達。入口前には、マスコットになっている色とりどりの花で覆われている植物製のクマが鎮座しているのですが、カビが生えているように思う私の美的感覚はおかしいのでしょうか?

市観光局 http://www.bilbao.net/

 16時、グッゲンハイム美術館(Museo Guggenheim)へ。9ユーロで音声ガイド(英語)付き。ここは、1997年10月、ソロモン・R・グッゲンハイム財団によって設立された新しい美術館ですが、ビルバオの新しい象徴としての位置を確固たるものにしています。

 が、すぐに出てきました。つまらないんだもん。展示物は、20世紀中葉のポップアートが中心。うわ、私、ダメです。見るに耐えません。現代美術を嫌悪している者にとっては、苦痛でしかありませんでした。ま、全長130mの展示ホールなど、斬新な建物を見に行く価値はあると思いますけれど。

http://www.guggenheim-bilbao.es/

 美術館を出て河岸へと降りていくと、LRT(Light Rail Transit)が走っているのが見えます。そういえば、ビルバオではつい最近、路面電車が復活したのでした。

【参考】 LRTとは? http://www.jtpa.or.jp/contents/lrt/

 先ほどもらった地図を見ると、バスターミナル(San Mames)を起点にして川沿いを走り、ビルバオ美術館のある公園の脇を抜け(Abandoibarra)、グッゲンハイム美術館の下をくぐり抜けてアバンド駅(Abando)を経由し、アチューリ駅(Atxuri)に至るというもの。観光なら路面電車に乗るだけで巡れるのではないかというほどに、利用価値の高い結び方をしています。では、さっそく乗車。1回券は1ユーロ。土日祝日なら、1日乗車券が便利(3ユーロ)。乗る前には、改札機に通して時刻の刻印をしておくのをお忘れ無く。終点のアチューリ駅まで行ってみました。1912年に建てられた駅舎が、なかなか古びていて良い。ここはゲルニカ行きの鉄道の始発駅。駅舎を見るためとか、路面電車に乗るためだけに来てみても面白いでしょう。ただの細い路地がホームにになっています。

 ビルバオの街でわかりにくいのは、公共交通機関の運営主体が入り乱れていること。バスク鉄道による鉄道2本(Eusko Tren)、路面電車(Eusko Tran)、地下鉄(Metro)が2本、サンタンデール(Santander)やサン・セバスティアン(San Sebastian)へ向かうスペイン狭軌鉄道(FEVE)、それにスペイン国鉄(RENFE)があります。出発前に交通情報が手に入らなくて困ったのですが、道理で…… 交通関係の情報源を列挙しておきますね。

 アチューリ駅からは、そぞろ歩きをしながらアバンド駅へ戻ります。ちょっと戻ったところにスーパー“Champion”があったので、飲み物を購入。停留所リベラ(Ribera)の前には、風格のある建物、サン・アントン教会(Iglesia San Anton)リベラ市場(Mercado Ribera)が並んでいます。後者は、遠目にも黄色い派手な塗装が目を引きます。近づいてみると、ステンドグラスや柱頭に装飾華美の傾向があり、近代建築のお手本のような代物。これは!と思って調べてみると、やはり現地のガイドブックでは見どころ扱いになっていました。1930年、Pedro Izpizuaの建築だそうです。

 そこから旧市街の中へと入って教会と郵便局を見たあと、停留所アリアーガ(Arriaga)アリアーガ劇場(Teatro Arriaga)の荘厳なたたずまいを見る。パリのオペラ座を模したもので、1886年から90年にかけ、Joaquin Rucobaの設計で建てられたもの。なお、この建物内にも観光案内所があります。次の来訪のためにホテルの一覧をもらってきました。

 その対岸にあるFEVEのコンコルディア駅(Concordia)は1902年の建造で、モデルニスモ建築の特徴を存分に備えています。そのまま川沿いに歩いていくと、ビルバオ市役所(Casa Consistorial)の姿を正面に捉えることになります。1892年、同じくJoaquin Rucobaの設計。

 とまぁ、ビルバオは建築の見どころ満載です。日本で紹介されていないのはまずいんじゃないか、と思うくらい。近代建築というとガウディしか紹介しない『地球の歩き方』の悪いクセが如実に出てしまってますね。

 日も暮れてきたので、荷物を回収して宿へ。ビルバオでは催し物が開催されていたとかで『歩き方』に載っていたところは満室(そもそも4箇所しか掲載していないことの方が手落ちなのですが)。そんなわけで、ゲルニカ泊まりなのです。地下鉄ボルエタ駅(Bolueta)で、19時52分バスク鉄道(Eusko Tren)に乗り換え。

http://www.euskotren.es/

時系列順にお読みになるならば、ここでゲルニカ篇に進んでから、続きをご覧ください。

2004年6月12日(土)

● ビルバオ篇(その2)

 14時04分、ゲルニカからアチューリ駅(Atxuri)へ戻ってきました。 土曜日なので路面電車の1日乗車券を3ユーロで購入。

http://www.euskotran.es/

 アバンド駅で降り、昨日と同じくコインロッカーに荷物を収納。3ユーロ。もともとの予定では、そのまま次の訪問地へと移動する予定だったのですが、昨晩、現地のガイドブックを見ていて気がついたことがあったのです。ビルバオには、ロープウェイ(Funiclar)があり、山頂からの眺めが素晴らしいと書かれているではありませんか。どうして、そんな大切なことを『地球の歩き方』は載せていないかなぁ。再び路面電車に乗り、停留所ウルビタルテ(Urbitarte)で下車。目の前にかかっている斬新な橋(Zubizuri)を渡り、グッゲンハイム美術館側に1区画進んで山側に右折すると、正面に乗り場がありました。場所を確認したところで、14時48分、乗り場前にあったカフェテリア“Mandobide”で昼食。ずいぶん遅いと思われるかもしれませんが、一般にスペインでは14時から16時までが昼休みなのです。まさに食事時。

 黒板に書かれている「本日の定食アラカルト」から前菜に“Alubia blanca”、主菜に“Carrilleradas”を選定。理由は、何かわからなかったから。私、スペインに来て1年以上経ちますが、食品の名前については語彙数がやたら少ないのです。買い物するときは「これちょうだい」で済みますから。私が食べられないものは、ナマコ、軟骨、納豆の「3な」なのですが、当地で出てくることはないので安心。外食の時には、知らない名前のものを注文してみることにしているのです。出てきたのは(1)白インゲン豆とソーセージの煮込みと、(2)豚のホホ肉とろとろ煮。おいしぃ〜(>_<) これに、パン、ビール、食後に自家製プリンと珈琲までつけて、10.9ユーロでした。

 お腹も満足したところで、15時45分、アルトサンダ・ロープウェイ(Artixandako Funikularra)に乗る。15分ごとの運行だそうです。片道0.76ユーロ。山頂駅を出て左に進むと展望台がありました。うわぁ、来て良かった。ビルバオの街並みを、一望の下に見渡すことが出来ます。

 ここで新技術を投入。一時帰国したときに、新しい撮影機材として Nikon Coolpix 3700 を買ってきたのです。気軽にシャッターを切ると思った通りの写真が撮れているという、なかなか良い品。パノラマ機能を使って撮り、附属のツール“ArcSoft Panorama Maker”で処理すると、自動処理で一致点を探して画像結合してくれます。便利〜 ニコンは派手さに欠ける絵作りをしますが、光学メーカーだけあってカメラとしての性能はしっかりしているし。ただ、ドジなところがあって、充電器本体は240Vに対応しているのに、電源コードは110Vまでという仕様なのです。海外旅行のことも考えてほしいなぁ。

 景観を存分に楽しんだところで、16時15分に下山。荷物を回収して、路面電車の停留所サン・マメス(San Mames)にあるバスターミナル(Autobus geltokia)へ。17時30分、ラ・ウニオン社(La Union)のバスでビトリア(Vitoria、現地語ではGasteiz)へと向かう。4.8ユーロ。


established: 17/jul/2004

(C) 2004 GenOishi

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